Aug 17, 2008
「銀齢の果て」(筒井康隆)
「老人が増えてるのに若者が減ってて、負担がかかって大変だー」ちうわけで、政府が「老人相互処刑制度」ってのを導入しちゃいました。
「老人相互処刑制度」ってのは、70歳以上のお年寄りを対象に「各地区で期間限定で殺し合いしてください。生き残りが1人になったらその人だけ死ななくてもいいけど、2人以上になったら全員死んでもらいますー」ってな制度であります。
「ほなしゃーないなー」「えー、なんでー」と反応はさまざまでありましたが、「やらんかったらやられる」ちうわけで、対象になったおじーちゃんとおばーちゃんが、ご近所さんをやっつけたりやっつけられたり、ジタバタ殺し合いを始めてみましたってのが、このお話であります。
で、これで「え。『バトル・ロワイヤル』やん」と思った方、正解ー。筒井氏も「そんな話があるらしいねー」ちうのを聞いて、自分が70歳を超えたのをきっかけに書いたそうですよん。ちうか、筒井康隆が70歳超えてるってのが「えええええ」ですね。
「バトル・ロワイヤル」と違うとこは「武器を自分で調達する」ってのと、「どっかに連れて行かれて殺し合い」じゃなく「今住んでるとこで殺し合い」ってことかな。
ま、「バトル・ロワイヤル」から発想してできた話なので、どーしても比べちゃうわけですが、年齢をあげるだけでここまで面白くなるのねん。ってのが一発目の印象です。
まず登場人物のバリエーションが豊か。各お年寄りの性格の違いに加えて、今の状況に過去の経歴・職業が加わるため、「おー、『おじーちゃん』ちうだけでこんだけのキャラができるんやー」ってのが圧巻ですね。「70歳以上でキャラクタ作れ」って言われたら「まる子のおじーちゃん」と「よくある頑固じじい」くらいっか出てこないワタクシからすると、目からうろこボロボロです。
ってなわけで調達してくる武器や、攻撃態勢もバリエーション豊かだー。ワタクシはやっぱし「象」がお気に入り。だって象やもん。ぱおーんヽ(´ー`)ノ
「おばーちゃん」はちょっと少なめですが、まー筒井康隆がおじいちゃんなんでそこはしゃーないとこです。
ワタクシの買った帯には「要するに年寄りは早く死ね!というのか」ってデカデカ書いてありますが、今の「長生きしてくださいねー」「生活保障はできませんけどー」ってな政策や社会に突っ込みたいってのが一番なのかなー。
ま、ほかにも毎度おなじみの「そんなん言うてるけど口だけやんけー」や「ないことにしてるけど、あるやん」な点にも当然ザクザク突っ込んでまして、そんな「筒井節」も健在であります。
筒井本は「普通と思ってる世界が誰かの行動で普通じゃなくなっちゃう」ってやつと、「突飛な設定の中で普通の人が何かする」ってやつがありますが、これは後者です。前者の方がエログロ過多やし「狂ってる感」も飛びぬけたもんが多いので、筒井康隆の「そっち」を求めてる人には物足りんかもしれません。
でもこっちはこっちで狂い方がリアルな分、怖さは十分であります。なんかね、狂ってってるんやけど、その狂い方がわかるってあたりが「うわー」ってなるのですよ。
あとこの本は長編やのにすんごいスピード感があります。目次がないのです。目次がないっちうことは「章」がないのです。場面が変わったり時間がたったりしても、空行すらあけてません。なので、読み始めたら最後まで一気になることでしょー。
インタビューでは「読者に息継ぐ暇も与えたくなかったの」ちうてますが、全くその通りの仕上がりになっております。読後感は、「筒井康隆の一万メートルダッシュ」を見せられた気分になりますよん。
「70超えてからの一万メートルダッシュ」見たい方は、ぜひどうぞ。
Jun 01, 2008
「カラオケバカ一代」(ジョージ朝倉)
ジョージ朝倉の初単行本で5ヶ月で絶版したそうな。ちなみにこれは復刻版です。「カラオケバカ一代」(全3話)のほかに、短編(ギャグと少女マンガまぜこぜ)を混ぜ込んだ、「同じ人が描いた」以外に中身は何も統一性がない、ごちゃ混ぜな単行本であります。
が、やっぱしワタクシのお気に入りは「カラオケバカ一代」。「バカでハイテンションなギャグマンガ」を形にしてしまったところがすごいっす。3話もあるのがえらいっす。ちうかこれ以上あったら一気には読みきれません。「マカロニほうれん荘」が一気読みできないよーなもんです。
一応基本ストーリーとして、「何でも出来る男前の達也くんは、唯一の弱点『オンチ』を克服すべく、勝手に『師匠』と決めたおねーちゃんと、ジタバタする」っちうもんがあるのですが、もう2話からそんな設定すら忘れ去られ、「達也くんと師匠とライバルくんが、ただジタバタする」に絞られてまして。
こーなってくると、読んでるワタクシとしては「闇雲に跳ね返りまくるスーパーボールの行方を『どこにいくんかなー』と目で追うのに必死」気分が味わえてしまうのであります。またこれが箱の中を跳ねてるならまだ追いかけやすいんやけど、「坂の上から落とした」状態で飛んでいってるので大変大変ー。
当然、一回読んだだけで全ネタを拾えてなかったりするワタクシは、例によって例のごとく何回も読み直しては「あー、ここのちっちゃい小ボケを見逃してたよー」と反芻しまくりなのでありました。ただし読む側がある程度元気がないとマンガのテンションについていけないので、読み直すのにはちょっと間をあけてます。
そんなバカパワー炸裂の「カラオケバカ一代」、やっぱしファンが多かったようで、復刻版が出たときに見返しに「カラオケバカ一代」っちう歌の歌詞を載せていたのでありますが、講談社漫画賞受賞時にパーティで曲を作ってCD化までしてしまっているよーです。
「しょっきんおんちぼーおおーい♪」(こちらで一部視聴できます・音出るので注意)単行本を持ってる方は歌詞を見ながら聞くと楽しいっすよ。2番も聞きたいなー。
ってなわけで、絵は今と比べるとかなり若々しく雑な部分もあったりするのでありますが、「ハイテンションなギャクマンガに置き去られる感」を味わいたい人にはオススメっす。ワタクシも久々に読み返したのですが、ついていけて満足満足でありました。
※ そうそう、今ジョージ朝倉オフィシャルサイトから過去のインタビューとか見てて知ったのですが、ペンネームの由来はコンドルのジョーの本名(ジョージ浅倉)から取ったそーですよん(ソースはこちら)。ジョーったら、そんな名前やったとはー。
May 25, 2008
「榎本俊二のカリスマ育児」(榎本俊二)
育児マンガによくあるパターンは、「こんなに大変やけど、こんなことがあったからおっけー」ってやつと、「しんどいって聞いてたけどそーでもなかった、これは聞いてなかったけど意外と大変かも」ってやつで、ま、どっちのネタもギャグにして面白おかしい話にしてるってのが多いわけです。
たぶん「これからお母さんになる人」に「結構楽しいよ」って言いたいし、「もうお母さんになってる人」に「結構大変やったでしょ?」って賛同を得ようってのを目的に描かれてるんやと思うのですね。つまりメッセージ色が結構強いもんなのです。語ってるちうかね。
で、描いてる人も圧倒的に女の人のが多いわけで、ワタクシもいくつか読んでるわけなのですが、大体そんな感じかなーと(内田春菊、堀内美佳、桜沢エリカ、現代洋子、石川三千花、森本梢子、深見じゅん、本やったら、さくらももこ、よしもとばなな、石坂啓あたり)。
男の人のんってのは、あっても割と観察系っちうか「奥さんと子供のドタバタを見守りつつ、たまに子供に接触して『おおおお』って感想がネタ」って感じの「一般的な父親目線」のが多いかと思うのです。距離感がそんな感じなんかなー。(高岡凡太郎、江川達也、魔夜峰央あたり)
で、この本ですが、「女の人が描く目線」でもなく「他のよくある父親目線」でもなく、「母親や子供から投げられたイベントに反射的に返しまくる」ってな、「スパイクを打たれ続けられる中、ひたすらレシーブ」といいますか、「延々と終わらない壁打ちテニス状態」といいますか。
「こんなん言われた」→「こんなんしてみた」→「こんな仕打ちが返ってきた」→「こんなん仕返してみた」パターンが、どんどん続いていくだけなので、ネタは「育児マンガ」なんやけど結果はギャグマンガになってるのですね。つまり一切語りがありません。
自画像も目が書かれてないので、無感情に打ち返してるってのが強調されてて、子育てイベントがシュールに繰り広げられております。「子育て要員としてねーちゃんに呼びつけられた弟くん」って目で見ると、とってもピッタリきそうです(そしてお家でお仕事)。
ただ、一切語らずひたすら大変な目にあってるだけなのに、全部読むと「子供ができてよかったって絶対思ってるんやろなー」って確信できちゃう後味なのですよ。何なんでしょうこれは。
ちなみに、奥さんの耕野裕子も「愛ある暮らし」って育児マンガ出してまして。初出を見るとこちらの方が先行して出たのかな?こちらは他の育児マンガ同様「大変やけど幸せ(はあと)」なマンガで、榎本俊二も目ありで感情豊かに登場してますので、ギャップを見ると面白いっすね。
May 18, 2008
「LOST(ロスト)」(イアン・フィリップス)
最近そんなに見かけなくなった「ペットが迷子になったので探してください」ポスターですが、世界中からこのポスターを集めまくって1冊にまとめたのが、この本です。
基本「写真」や「イラスト」が付いてて、特徴が書いてあって、「こんなにこんなに大事にしてるの」ってな訴えがあって、「連絡ください」って締めてる切羽詰った訴えが殆どなのですが、中にはやっぱし突っ込みたくなるもんもあるわけで。
ちっちゃい犬や猫くらいなら「何とか探せるかなー」と思うのですが、「アヒルです。名前は○○ですが、呼んでも返事はしません」とか、「ドーベルマンです」「牛です」「キングスネークです」「黒くて大きなネズミです」「カラスです」って「見つけてもどーにもできんぞ」ってやつまで迷子になってまして、かなりバラエティに飛んだもんが集まってます。
読んでるワタクシから見たら、まず「見つけられるかなー」って目で見るやないっすか。でも中には「アンタがあわててるってのはよーくわかった」で終わってしまうもんも結構あるもんで。「カメ見つけて!」って。ごめん、見つけられないかもー。
そんなつたない情報でも、明らかに子供の字でイラストまで書かれてるやつなんかは「早く見つかってくれー」って願ってしまったりしまするね。「カナダのまっしろネコ」や「スイスのプスプス」は「自力で帰ったってくれー」って思っちゃいます。
でもまー、そんな「見つけなくっちゃ目線」を捨てて「世界のペット事情」を見るよーに見ていくと、これがまた別に見えてくるもんもありまして。
まず写真が使われてるよーなポスターやと「こんな家で飼われてるんや」ってのが見えてくるし、イラストやと「この国やとこーいう描き方するのかー」ってのが新鮮やし(デンマークのネコのイラストが結構かっちょいい)、字がたいてい直筆なのでその筆跡を眺めるのもいいのですよ(筆記体やったり違ったり)。
アメリカとかやと「迷子になりました」だけじゃなくて、「盗まれました」ってのも結構多いのがビックリですね。カバンに入ってたりとか車に残されてた場合があるみたいやけど。
本の構成は、ポスター1枚に付き見開きの2ページ使用してます。見開きの右側にポスターの画像。左側に文章の日本語訳。全体的に「犬」「猫」「鳥」「その他」って章にわかれてます。左側の開いたスペースにはパラパラマンガが仕込んでありまして、最初から最後に向かってパラパラすると「ペットが駆け寄ってくる」って動きになってるのが、これまたかわいいのであります。
最後まで見たら「みんな無事に見つかったのかなー」って気がかりがちょっと残るってのはありますが、世界中の素人さんの本気ポスターは見てるといろいろ見えてきますねー。飽きないっす。
May 11, 2008
「有栖川有栖の密室大図鑑」(文:有栖川有栖/絵:磯田和一)
12月の半ば過ぎに、年末年始用の分厚くなってる「テレビガイド」を買ってきて、「あー、この番組面白そうやなー」ってチェックするの好きな人、手ーあげて。はいはいヽ(´ー`)ノ
ほんで実際わくわくしながら番組観てみると、「あれ?」ってことになったりもするのでありますが、まーそれはそれで「わくわくした」って気分も含めて楽しいもんっすよね。
で、推理小説好きの人が、この本を読むと、まさしくその気分が味わえること間違いないですよ。
ワタクシは実際好きですから、それなりにいっぱい読んでるわけですが、「面白い密室」が登場するからって「面白い小説」っちうわけではないことぐらいはわかってるわけですよ。
しかーし。「面白い密室」って聞くと「どんな解決するんか知りたいなー」と思っちゃうのですよ。ほんで「それはすごーい」とか「それは強引やろー」とか言いたいではないですか。
この本は古今東西の推理小説で「密室」が出てくる話を41本紹介しちゃってます。有栖川有栖が文章で「いかに読むべき密室か」をこんこんと説明したおし、とどめにイラストレータの磯田さんがそれを読んで、密室部分をイラストで懇切丁寧に明かしてしてくれちゃってるわけです。
「こんな部屋で、こんな窓があって、ドアの鍵がどんなんで、机の上やら床の上に何が置いてあって、こんな風に被害者が倒れてて・・・」って、そこまで詳しく密室を紹介しときながら、答えは書いてないわけですよ(当然)。「知りたかったら読め」って言われるわけですよ。面白そうやないですかー。読みたくなるではないですかー。あー、すっごい気になるー。
紹介されてる中には「それ知ってるー」ってやつもありまして、それに関しては「そこまで持ち上げるほどのもんでもなかったぞ」ってやつもあったりしますが(特に国産)、「名探偵が多すぎる@西村京太郎」のように「あー、ワタクシもその密室は好きだー」ってやつがあったりもするので、紹介されてる本が一概に面白くない話とも言い切れず、「うーん、やっぱしかたっぱしから読むべきなのかー?」と悩んじゃいますね。
紹介されてる本も、長編と短編が入り混じってるわけですが、ワタクシ的には「密室のトリックがメイン」って話はやっぱし短編の方がキレがいい印象があって好きかなー。長編になるとどうしても「いくつか起こった事件のうちのひとつ」って扱いになるんで、扱いが雑になりがちやし。
後、どうしてもトリックが「早い者勝ち」なとこあるんで、時代の古いやつから行くほうが「おおお」って言える度も高いわけで、ってなるとやっぱし狙いは海外もんの古典かなー。「カー制覇」あたりからいっとこうかな?
ってなわけで「本格好き」で、解決編の後で「『それはどーよ』って文句を言うのも辞さないぞ」っちう人には、うってつけのガイドブックではないでしょーか。年末年始のテレビガイドのよーに「わくわく気分込みで」推理小説が楽しめると思われますよん。



